アドバンス・ケア・プランニング(ACP)とは違う透析中止?
残念なニュース。透析中止を望み、撤回したのに同意書通りにそのまま…
という流れでしょうか。
記述の範囲で疑問視せざるを得ない点が多々あります。
アドバンス・ケア・プランニング(人生会議;ACPとここでは言います)は、
「人生最終段階の医療やケアについて、本人を中心に関わる人たちと継続的に話し合うこと」です。
この時、
ACPでは
「意思は変わっても良い、変わった時はその意思に沿う」
ことが前提です。
この報告での不思議な点は、
ー本当に、人生の最終段階という状態であったのか。
年齢が極めて若く意思疎通できる。複数人の医師による判断があったのか。
ー患者さん本人の意思確認がしっかりできるような状態があり、意思の変更や確認ができたならその時に変更できたのにその体制があったのか。
ー仮に人生最終段階という判断が適切で、かつ、その時のケア(例えば痛みや苦痛に伴う症状の緩和)が全くなかったのか。
腎臓透析においての人生の最終段階においての意思決定は非常にシビアなものです。
透析そのものが、生命維持と直接繋がっているためです。
なお、
日本透析医学会、血液透析療法ガイドライン作成ワーキンググループおよび透析非導入と継続中止を検討するサブグループにより報告されている
「維持血液透析の開始と継続に関する意思決定 プロセスについての提言」(透析会誌 47( 5 ):269~285,2014)
では、次の状態で「維持血液透析の見合わせ」について検討するとされています。
1) 維持血液透析を安全に施行することが困難であり,患者の生命を著しく損なう危険性が高い場合
①生命維持が極めて困難な循環・呼吸状態などの多臓器不全や持続低血圧など,維持血液透析実施がかえって生命に危険な病態が存在
② 維持血液透析実施のたびに,器具による抑制および薬物による鎮静をしなければ,バスキュラーアクセスと透析回路を維持して安全に体外循環を実施できない
2) 患者の全身状態が極めて不良であり,かつ「維持血液透析の見合わせ」 に関して患者自身の意思が明示されている場合,または,家族が患者の 意思を推定できる場合
①脳血管障害や頭部外傷の後遺症など,重篤な脳機能障害のために維持 血液透析や療養生活に必要な理解が困難な状態
②悪性腫瘍などの完治不能な悪性疾患を合併しており,死が確実にせ まっている状態
③経口摂取が不能で,人工的水分栄養補給によって生命を維持する状態を脱することが長期的に難しい状態
このような条件がある中で複数人の医師、コメディカルの支援のもと、本人の代理人(本人の意思を代理で言える立場の人)が十分に話し合い、事実の確認、説明、本人の生命に対する価値観などを踏まえて決めていくことになります。
この状態に該当するのかどうか、になります。
患者として
医療は、本人の意思が尊重されるという原理・原則があります。
医療に縁のない方であればあるほど、突然病院に行き、命に関わる事態に直面した時、思考が止まります。
説明されてもよくわからない言葉が多く、同意書を目の前にしても意図することがわからないようなケースもあります。
この時、本当に話せるかかりつけ医や相談できる薬剤師、看護師などのコメディカルがいると良いので、是非周りを見渡してみてください。
と言われても…と、困った時は別の手段があります。
民間の医療保険に加入している場合は、契約者様向けに「相談サービス」が付加されています。
この請け先は、看護師さんなどの専門職が対応しています。
無料健康相談 | 健康関連・介護関連・育児相談 | 日本生命保険相互会社
こちらを活用しても良いですね。
そして、一番大切なことは
今、そこにいる医療従事者の方達と、しっかりとお話すること。
わからない場合は、メモを取ること。
昨今では、録音も先生が勧めてくれるケースがあります。理由は、「わからない」を解消したいから、です。
互いに、病に向き合うことが治療なのですから、周りの人と協力して、理解し、納得し、道を決めていく、ということが大切です。
そして、平時に医療のことについて、命について考える時間を作っています。
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