東京都下や都市圏ではロックダウンに近づいている気配が感じられます。そして、医療介護従事者の現場の皆様、本当にありがとうございます。
エンディングノートを書いたり、セミナーに参加し真剣に自らの命の終い方を考えておられた皆様にお伝えしたいことがあります。
COVID19で命を終えるのは
逝く側も残される側も一番の悲しみを追う。
懸命に考えたエンディングノートの通りにはなりません。
叶うのは財産贈与くらい、他は悔いと悲しみを残すばかりです。
不要不急な用事以外は自宅で、手洗い・うがい・適度な運動と睡眠を心がけ、COVID19に感染しないよう、大切な人と一定の距離を開けて対話し笑顔で過ごしていただきたいと思います。
といいながら、最悪を一度は想定しましょう。COVID19に罹患してしまった場合、全く異なる思いや決断を迫られる事になりそうです。考えたくないと目を背けず、今こそ、「どうする」を話し合いましょう。
COVID19「罹患したら」のイメージ 志村けんさんのご逝去から
COVID19に感染したら?最悪のパターンは命を落としてしまうこと。
まず、検査で陽性となったら…。指定機関病院へ移送され、そのまま帰ることができません。検査さえも覚悟の一つになるのかもしれません。
志村けんさんのご逝去のニュース。
国民全員がCOVID19への思いが変わる出来事だったかもしれません。それは、自分にもすぐに襲いかかってくる可能性のある事態です。
志村けんさんは
病院でお一人でお亡くなりになり…感染リスクがあるためそのまま火葬され、遺骨となってご遺族のもとに帰られました。
これは、思い通りの葬儀と同じでしょうか?
<COVID19で人工呼吸器をつけるという意味>
COVID19で重症化すると、人工呼吸器、そして、ECMOと呼ばれる体外人工心肺による呼吸管理となります。それは、もう自らの肺で呼吸できないほどの病状になったことを意味します。つまり、その状態は装置がないと死に直結します。
<COVID19は急性期疾患なので可能な限り救います>
エンディングノートで「人工呼吸器を装着はいらない」と書いている方。
COVID19で重症化した状態。初期は症状は重くないので意識もあります。感染症の専門医の先生の言葉によると数日間のうちにみるみる悪化してしまうという表現がありました。
入院から病院にて隔離された後、悪くなる方はみるみるうちに肺が侵され、普通に会話ができなくなり、呼吸ができない状態となる、人工呼吸器の装着、あるいはECMOを借りて呼吸をする事になるのです。
COVID19は、急性の感染症で緊急に救う必要性があるもの。救う努力を止めません。
医療従事者は「救う」ために、治療を行うでしょう。この時、家族には確認のお知らせが来るかもしれませんが、基本は救う医療を行います。苦しい時は苦しみをとります。ご本人とは、普通に会話や意思確認はこの状態の時はかなり難しい状態でしょう。重症では会話さえままならない、本人の意思は確認できない状況も想定されます。
それでも回復の見込みがなかったら…
大切な方たちに会うこともなくそのまま息を引き取り、遺骨となり家族と対面するなどということが現実に起きてしまう。それも数日の間に。
姿形を拝むことなく、遺骨として箱の中に収められた状態でのご帰宅。それを想像してください。自分も家族も無念の一言です。
医療崩壊は人工呼吸器の装着や取り外しの決断を迫られる
そして今、人工呼吸器やECMOの需給問題が出てきています。これらの装置は特別なもので数に限りがあります。治療者が供給できる量を超えた患者が来院すれば、必要な人へ機器の装着ができない自体が起こりえます。
人工呼吸器が不足してしまうと、新しく来院する方のために、治療中でも意思決定に基づく家族と話し合い、医学的な判断のなかで、人工呼吸器を取り外すという状態に対応する可能性がおこります。
あなたの大切な人、そして自分がこの状態になったらどうしますか?
ぜひ皆さんゆっくり時間があるのですから、今こそ、大事なことを話したり伝えたりして過ごす時間にしてください。
また、COVID19に罹患し軽症な場合、自宅待機になることも想定し、家族間でどのように対応するか、自宅療養の方法、連絡先の方法、ケアの方法を考えてみてください。
<医療資源を配分しなければならない事態も>
生命・医療倫理研究会という臨床倫理を学ぶ有志の先生方は、今後起こる可能性のある、「爆発的な感染により人工呼吸器などの装置不足により呼吸器の取り外しを余儀無くされる可能性」を想定し、医療従事者の行うべきプロセスの提言をサイトにて公表しています。
square.umin.ac.jp
COVID19の感染爆発時における人工呼吸器の配分を判断するプロセスについての提言
(あくまでも提言であり、行うべきプロセスを示しています)
有志研究会の先生方ですが、これらの先生方は、倫理的なジレンマに応じる医療従事者の決定において重要な要素を理解している方達です。
しかし、どうでしょう。
この意思決定の難しさ苦しさ。
それでも医療従事者は、この決断に向き合い、資源を有効に使うために、命の終わりに近いか否かを医学的に判断し、トリアージを行い、命を救える方に優先的に治療を行います。
それを支えるのはご本人の意思の強さ硬さ、受け取った人たちの意思の固さと支えあいです。想像がつかない苦渋の決断になることは間違いありません。
だからこそじっくり考え、生きるためにやれる事を今しっかりとやっていきたいですね。毎日を幸せでいい時間だったと思えるように。
そして、医療崩壊を起こさせない、こんな苦渋の決断を医療従事者、本人、家族が負わないようにと、心から願うばかりです。