青いパスポート 赤いパスポート
若年性認知症と診断され、その体験を通して、認知症当事者からの発信を積極的に行なっている丹野智文さん。
上海ツアーにご一緒させていただきました。
私自身は5年ぶりの海外渡航、かつ、初めての中国。
何よりも最初のハードルは
「出国」だの「入国」だの。
噂では、IT化が進んでいるらしいということはわかっていたが。
「出国」はまあなんとかなったけれど、中国の入国では
10本指(要するに全ての手の指)の指紋を取られ、
Immigrationカードも機内で手に入れられず、空港着いたらすったもんだ。
記入に際して、丹野さんがそばにいてくださり、
ご自身がすでに記入されていたカードを参考にできるよう、
私に差し出してくださいました。
「待ってるから大丈夫だよ」
という言葉までかけてくださる。
優しすぎる!
そして、入国審査へ。
その時ふと一言。
「今みんなが赤いパスポート持ってるので気づいたけれど、僕はいつまで旅行に行けるかわからないから、5年の青いパスポートにしたことを思い出した。でも、こんなに旅をして講演ができると思っていたなら10年でも良かったのかな。」
丹野さんの笑顔。
そして、ツアーでもみんなに笑顔を振りまき、誰よりも元気。
ちょっとした観光地での自由行動も一緒に歩き回りました。
混雑していて、しかも、なんとなく迷路のような豫園商城
では、ちょっと不安そうなお顔をしていましたが、もちろん私たちも不安(笑)。
時間通りに集合できるのか?
なんとなくソワソワしている丹野さんがそこにいた。
でも、同じですよ。
そして、語り合いの中でも。
ある方が帽子を被っていて、決して脱がないとのこと。
話もわからないのだという。
丹野さんは、その人と話してみる。声をかければ問題なく話してくださると。
すると、頭の上の部分にいつも木の枝のようなものが見えて、ぶつかりそうで怖いのだそうだ。
つまり、帽子が脱げないのは、「怖いから」。
事情を聞いたらすぐにそんなことない、と伝えるだけで安心なのに。
帽子だって理由を聞けば、みんなそうするでしょ?という話なのに。
そんな話を様々教えてくださいました。
こういう事情について「きく耳」を塞ぐのは、
周りのかかわる人間たちなのかもしれないですね。
私もある施設のケアマネの方からの発言に驚いたことがありました。
「〇〇さんって、すぐに忘れちゃうんですよねー!」
とまあ、本人に向かってニコニコとこんな言葉を投げかけている。
私は、その時、◯◯さんの笑顔の中にある寂しそうな眼差しを見逃しませんでした。
そういうことなんだろうな…。常に。
丹野さんのお話で必ず出てくるメッセージ。
「僕たちの声を聞いて、僕たちのやれることを取らないで。少しだけ時間を作って待ってあげて。」
帰路で丹野さんに
「ありがとう、そしてまた会いましょうね!」と伝えました。
すると
「そうだね、でも、忘れちゃうかもしれないけど、そしたらごめんね。
でも大丈夫だね。」
と。
笑顔と優しさがあれば。丹野さん、本当にありがとうございました!
また会いましょうね!