本日はJASDIフォーラム 令和第1回
『マルチチャネル時代の医薬品情報とMRの情報活動』
―医薬品情報のマルチチャネル化はMR活動にどのように影響するのか―
に参加しました。「マルチチャネル」がテーマでしたが、MR存在論についての根底が語られました。
当方の参加目的の一つは
リモートMR(オンラインMRと弊社では言っています)がどこまで浸透してきたか
です。
こちらはこの先も増加するのではないかと思っています。
利点として、
1)訪問では取りにくい「アポイント」により成立するもので、対話時間が十分にあること(その前のリーチが必要・工夫が要る)
2)本来のMRの情報提供の場・機会として機能すること
3)専門領域の詳しい対話が可能である
などが挙げられていました。
確かに顧客と対話しつつ必要な情報を提供できれば先生にとっても有用なお時間になると思っていますし、
私はこの方が多忙な先生たちのニーズにもマッチするのではないかと思います。
オウンドメディア(相手のリーチありきなスタイル)なので、互いのWin-Win形成にもつながります。
(こちらは、一般の発声を含めた多視点からのコミュニケーション講座と経験を積み上げることが必要で、訓練が必要です。)
それに、企業では社内も営業でもオンラインの活用が常態化してきており、当たり前にZoomやGoogle Meetなどのアプリ、企業独自に導入した社内プラットフォームを用いての対話が行われています。
今では、「オンライン飲み会」など、仲間で手軽に集まって話をするような機会が増えているようです。
さらに、来年の5Gで通信状態がさらに良好になることや、病院でテレビ会議のモニターなどの設置やデバイスの使用が増えてきており、そのニーズはより一層高まると思われます。
(弊社のプログラム)
製薬会社向け研修 | 株式会社 健育社
二つ目の目的は
顧客である「医師」「病院薬剤師」の先生方の視点からのMRマルチチャネルディテーリングをどう捉えているかを伺う
ことでした。
横浜労災病院 乳腺外科部長 千島隆司先生からは
「今のMRでは必要な情報が得られない」
とする内容でした。
がん治療(乳がん専門)の多職種連携が進められている中、MRがチームとして加わるためにはVisionを共有すること。
Value =心の中の基本姿勢・価値観
Mission=良質な医療(専門知識に支えられえた適切な治療)
安全な医療(組織的に管理された安全対策)
十分な支援(治療を安心して受けるための環境)
Narrative Based Medicineの実践(身体的、心理的、社会的支援)
Vision=患者中心の医療を実現する患者家族の笑顔を実現する
製薬企業はミッションに「患者さん中心の医療」を掲げているなら、本当に 十分な支援としての NBMへのアプローチが重要ではないだろうか。
特に乳がんの患者さんのピークは40歳代後半から50歳代であり、85%はサバイバーとして元の生活に戻ることができる。15%は再発しメタバイバーとなり、今の新薬はこちらをターゲットとしているケースがほとんど。後者の場合の本当の治療は状況により、患者さんの人生の優先順位や様々な背景と全てが絡みあった治療となる。治療の弊害 が多いと治療が中断する。
副作用や社会的障害の解決が不可欠であり、薬物治療を完遂することできない場合もあり、それはエビデンスでは補完できない。
「薬効を患者に届けるにはどうするのかを考えてみてほしい」
「人生のカウントダウンが始まった、と感じたと話す患者さんへ何ができるのか」
その重みを感じてほしい。それこそがPatient Journeyを鑑みた情報提供だと思う。
「領域のプロフェッショナルとしての知識」は自社製品の情報だけではない。
本当は他社製品との使い分けや差別化をしてほしいのだが、それは今禁じられているようでどうなのだろうか。また、学会発表の内容は話することができません、ということもそもそも会話ができないのは如何なものか。
というものでした。
→こちら、悲しいことにGLではできないことになっております。
医療供給側からのお考えとして先生は、
専門医以外で尽力されている一般外科医へのMR情報提供配分を手厚くしてほしい
というニーズも示されました。
乳腺専門医の全国分布の偏在を鑑みると、地域によって孤軍奮闘する専門医や、一般外科医の先生たちがいる。がん拠点病院だけでなく、そうした、情報を自ら取りに行くことが難しい多忙な医師の方へ手厚く情報提供をしてほしい、とのことでした。
製薬企業ではほとんどが「専門医集中」の情報提供が鉄板ですが、
「日本の医療を支えるという視点」からのご発言は 目から鱗でしたし、ごもっともなことと感じました。
この視点は企業としても社会貢献・医療制度の維持向上として還元することが求められますし、考え方を変えて「できること」に変換できると思います。
杏林大学医学部附属病院薬剤部 若林進先生は、独自にアンケートを取り、マルチチャネルな情報提供について語られました。
ブルーレターの前に動くか、後に動くか
今では「PMDAメディナビ」に登録すればメールで一度に緊急安全性情報が手元に入る。その時使用している患者さんを調べ処方医へのお知らせすることになるが、数日後にMRがやってくるケース、レター受け取りの少し前にメールが届くケースでは存在が異なることは明白だとするお話がありました。
また、メールやチャットで済むことは多々あるとの言葉も。
MSLは話せるけれど、MRは話せない
という謎の線引きもどうなのか、とも。
MR認定センターの近澤洋平様からは、冒頭にMRの現状に忸怩たる思いを語れたのち、現状を鑑み、この先安全性の収集を積極的に関与できるMRが求められること、MRは必要であるということを前提に、共にあるべき研修についてのお話が報告されました。
製薬業界全体として「薬害」を二度と出さない、という意識・啓蒙をするべく薬害根絶の日、安全性を徹底する月間を作ってもいいのではないかというお話、MR認定センターでは新たに専門領域としてMRテキストの電子化を進め、かつ、専門領域でのテキストを新たに作っているというお話でした。
ディスカッションでは、質疑も活発に行われました。
現場ニーズと規制のねじれ現象。
どうなるのでしょうか。
私の意見としては
ー国民皆保険を支えるMR活動を考慮する考えに基づく行動
ー医療機関の働き方改革を促進できるMR活躍の場の提供の可能性
(業務代行ではなく、義務としてできることを明確化する)
ー営利企業である以上、バランス・シフト・柔軟性が重要
と思いました。
「余力ある企業」ならできるのではないかと思っています。
MRそのものの「タスク」を考え直す時期なのかもしれません。
業界がタスクシフティングに向かうのですから。